記憶の甲殻

読んだ本、観た映画の感想を記憶にしまうブログ。

新品の手帳がくれる錯覚

私には、ある癖がある。

ついついやってしまう、癖。

 

それは、手帳を買うこと。

 

既に手帳を持っていようと、今が年の真ん中であろうと終わりに近づいていようと、そんなことは関係なく、ついつい新しい手帳を買ってしまう。

 

そのせいで一冊の手帳を初めから終わりまで綺麗に使いきることに成功したことは一度もない。

 

 

この癖に隠されているのは、反抗と決意だと、私は分析している。

 

「手帳を買う」という行為には、今まで過ごしてきた日々を「過去」にしまい新たな未来を描くという目的が隠されている。

私は手帳を新たに買うことで、手帳を買う前と買った後の時間に切り込みを入れる。

それは、有無を言わさず進んでいく毎日に、自分の意思で区切りをつけられる唯一の方法に思われる。

時間という暴力への精一杯の抵抗、とも言えるかもしれない。

 

時間は、疲労困憊で蹲っている私を待ってはくれない。時間は、私の意思・行為・状態に微塵も影響されることなく進んでいく。時間は、私のコントロールの範疇を完全に超えてる。

 

「手帳を買う」という行為は、そんなことは百も承知な上で、自分の意思で人生を新たに始められたという錯覚を私に与えてくれる。

そしてその錯覚が、この先も自分の意思で強く生きていくことができるという自信をくれる。

 

私は「手帳を買う」ことで、自分には生きる意思があるということを確認しているのかもしれない。