記憶の甲殻

読んだ本、観た映画の感想を記憶にしまうブログ。

『完璧な母親』まさきとしか

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 んー後味が悪い。期待通りと言えばそうかもしれない。タイトルから匂うサイコ臭。

 

前半はホラー、後半はミステリー、読了後は悲しみに沈む。誰のことも責められない、誰も救われないし、救いようがない。

 

ミステリーとしては、回収されず仕舞いな要素があったりするのでイマイチかな...?

(嫌がらせの手紙とか、金髪の母子とか)

 

なのでこの本は、ミステリーというより、正解のない母親のあり方に苦しむ母親達の悲劇として読んだ方が充実してるかも。父親の心理描写が少ないのも、母親達を追い詰める世界観を際立たせる。タイトルである「完璧な母親」は、登場する母親達への呪いの言葉なんじゃないだろうか。

 

不可抗力にも関わらず息子を守れなかったと自分を責める母親、自分の娘を守るために他人の子供を犠牲として見捨てた/殺してしまった母親、DVの夫から子供を守りきれない母親。

 

それぞれの苦しみを抱え歪んでしまった母親達に育てられ、自分の存在への疑問を抱きながら育った子供たち。

 

 

ところで、「母親」が及ぼす害や罪というのは、それが母親であるがゆえの行動だと分かった瞬間に、つまりその行動の前に「子供のため」という5文字が付け加えられた途端に、それがどんなに歪んでいてどこまでも誤っていたとしても、何故か赦されてしまう、もしくは赦さなくてはいけないような空気を醸す。

それは母の子に対する「絶対的な愛情の存在」を人間が直感的/先験的に認めているからなのかも知れない。

父の子に対する愛と母の子に対する愛とでは何処かに比にならない差異を感じる。

 

そんな事も踏まえて、どうも私には、「母親」というのは何か得体の知れない力をもった、恐ろしい存在に映る。

同じ女性であっても、「母親」を経験した者と経験していない者とでは言葉にならないレベルで何かが決定的に違うような気がしてならない。

そして私も女である以上、「母親」である側に行く可能性を持っていることが恐ろしくて仕方がない。

 

 

個人的には本当に苦手なテーマだけど手を出さずにはいられない、タイトル通りの一冊。